院長ブログ

「小さく産んで大きく育てる」は正しい!? ~メタボの視点からの見解~

2018.1.11 院長ブログ

「小さく産んで大きく育てる」は正しい!? ~メタボの視点からの見解~

 低体重児を出産したお母さんがいます。とても小さく両手に乗ってしまいそうです。お見舞いに行ったほとんどの人は、無事に育つか心配しながら、お母さんを喜ばせようと「小さく産んで大きく育てましょう」と言います。しかし帰りの道すがら、果たしてこの小さな命が無事に育ったとき、どんな大人になるだろうかと考えました。

 最近、メタボの研究からこの小さい命がどのようになっていくのかが、おぼろげながら分かってきました。それによると驚いたことに将来、心筋梗塞・糖尿病・肝臓癌、さらには精神病になる可能性が正常な体重児より高いということです。なぜでしょうか?

 ここに興味深いデータがあります。第二次世界大戦中、ナチス占領下のオランダは港湾が閉鎖され、大変な飢餓にさらされました。とくに妊婦の栄養状態は大変に悪く、このため赤ちゃんのほとんどが低体重児でした。そしてほぼ70年近く経ち、その頃に生まれた低体重児の多くは今、肥満症に悩まされています。また大関武彦教授の調査によると、小児肥満児の生まれたときの体重は全員が肥満ではなく、多くの割合で低体重児もいることが分かりました。

 それでは何故このようなことが起こるのでしょうか?現在、次のような説明がされています。

 胎児のときに飢餓の状況に置かれると、胎児は生き抜こうとして、体質の変化や生命に必要不可欠な最も大切な遺伝子に変化が起きます。例として、すい臓ベータ細胞数の低下が低体重児では認められ、将来糖尿病になる可能性が示唆されます。

 また腎臓糸球体数が約30%低下して、高血圧の原因になると言われています。さらに倹約遺伝子プロモーター領域のメチル化度の変化、DNAメチルトランスフェレースの活性化の変化が、肥満の原因の1つと考えられています。

 小児肥満は成人肥満・脂肪肝、ひいては非アルコール性肝炎(NASH)や肝臓癌の原因となります。さらに心配なのは、精神病の発生頻度も増加するということです。

 1944年の飢餓の冬に生まれたオランダの赤ちゃんや、1960年代、毛沢東指導による中国の大飢饉の年に生まれた赤ちゃんは、他の年の赤ちゃんに比べ、約2倍の発生頻度で統合失調症が発生しているとの報告があります。原因不明ですが、葉酸を含め、ビタミン不足が原因の1つではないかと言われています。

 こうしたことから、次のことが考えられます。まず「小さく産んで大きく育てる」という考えは危険であると認識すること。また妊娠したら、しっかりと栄養をとり、小さな赤ちゃんをできるだけ産まないこと。さらに、やせた状態で妊娠することはなるべく避けること。最後に、低体重児を産んだ場合、むやみに栄養過多となる食事を避け、生活習慣を早期から厳格に指導することです。

 もとより私は産婦人科医ではありません。これらは、あくまでも内科医がメタボの観点から結論したものです。妊娠状況に関してはさまざまな考えがあり、この話がすべてではありません。ご心配な方は、かかりつけの婦人科の先生にご相談ください。

2018.1.4 院長ブログ

新年明けましておめでとうございます

本年も患者様が笑顔になれるお手伝いができればと思っております。

スタッフ一同、粉骨砕身の覚悟で頑張ります。

昨年同様、よろしくお願い申し上げます。

小山すぎの木クリニック

院長 朝倉 伸司

2016.5.20 院長ブログ

Diabetes TV Symposium 2016 『フォシーガ』

“The role of SGLT inhibitors in type 2 diabetes : when and how should we use them?”

Professor Lawrence A Leiter

Medicine and Nutritional Sciences, University of Toronto

2016年5月20日

アストラゼネカ、小野薬品共催で上記のTVシンポジウムが開かれました。

Leiter教授は、糖尿病領域での代表的な臨床試験である、DCCT、ACCORD、ADVANCEなどに携わったとても有名な教授のため、今回、日本人向けにTVシンポジウムで講演していただけるとのことになりました。

SGLT2阻害薬は、実に多くの製薬会社が競い合って開発・販売しているため、どんなものを使ったら良いか、どのように使ったら良いか、世界的権威の先生から、TVを通して直接教えていただけるとのことで、とても楽しみにしておりました。

ブドウ糖は、腎糸球体で原尿として180g/日 前後が出てくると、近位尿細管のS1,2 SegmentでSGLT2より160gが、S3SegmentではSGLT1より20gが吸収され、正常では尿中には出ません。しかし、高血糖の状態では、糖の再吸収能力を超え、尿糖が出現します。私たちは尿糖が出ると、どうにかして尿糖が出ないよう、インスリン製剤やDPP4阻害剤、その他多くの薬を使用し、αグルコシターゼ阻害薬のように便から糖を出してしまうことまでは考えつきますが、尿から糖を逆に出して、糖尿を治してしまおうという発想には、大変驚いた記憶があります。SGLT2は、糖を尿として多く出してしまうため、浸透圧利尿での脱水、老人ではそれに伴う脳梗塞、心筋梗塞などが出やすく、70歳以上の高齢者では原則適応外など、使用が難しい印象がありました。

今回、Leiter教授より、カナグリフロジン(カナグル)、ダパグリフロジン(フォシーガ)、エンパグリフロジン(ジャディアンス)3種の差異についての講演で、現在の試験データを元に以下のような説明がありありました。

①(メトフォルミン+フォシーガ)投与群は、102週経過後、メトフォルミン単独群と比べて、体重が平均3kg減少した。

②フォシーガ(5)+インスリン療法群は、インスリン単独投与群に比べてHbA1cが0.6%減少する。

③上記3種のSGLT2阻害剤とメトフォルシン併用群では、HbA1cの減少が、フォシーガ(-1.2%)>カナグル(-0.73%)>ジャディアンス(-0.5%)となった。

④HbA1c 8.5%以上の群では、HbA1cの減少が8.5%以下群に比べ有意差をもって良好である。(-1.22% vs -0.4%)

⑤EMPA-REG Outcome study(ジャディアンス)での心不全、Cardiovascular deathに関してリスクが35%低下した。

⑥Dapagliflozin CV meta-analysis にても心不全入院を明らかに抑制した。

⑦SGLT2のpleiotropic effectについての説明

⑧SGLT2阻害剤が心不全を抑制した理由

⑨現在、教授が行っている患者1.7万人を4~5年追跡調査した最大規模の試験DELCARE-TIMI 58(Dapagliflozin Effect on CardiovascuLAR Events)についての中間報告においても、特に著明な副作用はみられず、とても安全な薬である。

当院にも多くの糖尿病患者様がいらしており、今後の診療にとても役立つ講演でした。

院長ブログ/小山すぎの木クリニック

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